魚醤を作る①~世界中にある魚の発酵食品
豆アジを狙ったがカタクチイワシと、それを追ってきた小サバばかり釣れてしまった。サバは骨が硬いので、アジのように唐揚げにはできない(撮影:趣味千編集部)

小魚やエビ、イカなどの小さな魚介類を長時間発酵させて作る魚醤は、濃厚なうまみを持った調味料で、アジアやヨーロッパで広く作られています。原材料は様々ですが、塩と魚介類を混ぜて徹底的に発酵させるという製法はほぼ変わりません。何度か過去に作っていますが、サビキ釣りで小魚が釣れたので仕込んでみました。

世界の魚醤

雨が降るとアジが釣れる防波堤。雨合羽の釣り人が集まったが、カタクチイワシばかり釣れていた(撮影:趣味千編集部)

 

①ナンプラー

魚醤と聞いて真っ先にナンプラーを思い浮かべる人は多いかもしれません。これはタイでよく使われる調味料で、カタクチイワシを原料としたものです。タイ料理のトムヤムクンなど、様々な料理に用いられ、エスニック料理には定番の調味料といえます。

②ヌクマム

アンチョビやいりこの原材料となるカタクチイワシ。「ごまめの歯ぎしり」の「ごまめ」だが、口が大きな面白い顔をしている(撮影:趣味千編集部)

ヌクマムはベトナムの魚醤で、イワシやムロアジなどが原料です。開高健の小説などでは「ニョクマム」と表記されています。フォーなどのベトナム料理に用いられ、深い味わいが特徴です。

③魚露

高知県ではキビナゴを使った醤油も作られている。鹿児島県ではキビナゴの出汁で作る「キビナゴラーメン」もある(撮影:趣味千編集部)

中国では各地で様々な原材料を使った魚醤が作られています。イワシやサバはもちろん、アミなどの甲殻類を使った魚醤もあります。魚露と書いてユールー(Yú lù)と発音します。

このほかにも朝鮮半島、欧州など様々な地域で魚醤は作られています。ごく小さな漁村だけで作られている秘密の魚醤もあるかもしれません。

日本の魚醤

ベイカは米烏賊と書く。小さなイカで、光で集めて網ですくいとる採取方法が各地である。おいしいイカだ(撮影:趣味千編集部)

日本も魚醤文化は発達しています。有名な「しょっつる」は郷土料理しょっつる鍋には欠かせない調味料です。原材料はハタハタが主に使われます。
四国香川県では「いかなご醤油」が作られます。イカナゴを原料としたもので、しょうゆの代わりに刺し身につけたり、煮物の調味料として使われます。
能登では「いしる」が作られています。しょっつる鍋と同様、いしる鍋の調味料として欠かせません。いしるは魚やイカの内臓や骨など、いわゆる「あら」も使うのが特徴です。
これ以外でも、アミやキビナゴを使う魚醤が各地にあります。

家庭で作る魚醤

カタクチイワシ+キビナゴ+ベイカ+小サバ。どういう魚醤が出来上がるか楽しみだ(撮影:趣味千編集部)

味噌が家庭でも作れるように、魚醤も家庭で作れます。「においがすさまじいのではないか」という懸念もあると思いますが、蓋のある瓶に作る程度で、屋外やベランダで保存するのであれば、そういう心配はほとんどありません。しかし平和のために、一応家族などの了承を得ておくのが無難でしょう。
魚を発酵させる食べ物に、シュールストレミング(surströmming)という料理があります。同じく魚を発酵させた調味液に漬けるくさやよりも、何倍もにおいがすごいというスウェーデンのニシンを使った食べ物ですが、魚醤は最終的に口に入れる段階では、食べ物と認識できる程度の香りになります。

次回はカタクチイワシ、サバ、キビナゴ、イカなどを入れた魚醤の具体的な仕込みをご紹介します。

魚醤を作る②~1年間発酵を待つ

 

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