塩漬けにして1年以上放置した小魚たちは、瓶の中で細菌の作用で分解され、液状になりました。この液を濾過したものが魚醤です。深いコクがある味わい豊かな調味料で、和洋中さまざまな料理に活躍します。
発酵のスピード
発酵の進度は、気温によっても大きく違います。夏は大いに発酵しますが、冬はあまり進みません。何月に仕込んだかで、発酵の進み具合に大きな変化が出ますが、最終的に春夏秋冬を経た1年が経つと、ちゃんと魚醤になります。
塩漬けの魚は、柔らかい腹部や目から溶けていきます。一方、尾鰭などはなかなか溶けず、最後まで残ります。イカなどは比較的早く、姿が無くなっていきます。
魚醤の濾過
1年経ったら蓋を開けてみましょう。完全に液体であれば、魚醤は完成しています。香りはナンプラーやニョクマム(ヌクマム)などのそれと同じはずです。もし固体が残り発酵が足りないようなら,、再び蓋をし、もう半年間発酵させましょう。
まずは瓶の中身を金ざるや布で、粗く漉します。小骨などが漉し取れます。次に漉した液体を、コーヒーフィルターなどの濾紙で漉します。こうすることで透明感のある琥珀色の魚醤ができあがります。濾過は時間がかかる作業ですが、気長に行います。
魚醤の保存
できあがった魚醤は琥珀色の大変美しい色をしています。瓶などに詰めて冷蔵で保存します。加熱していないのですが、水も加えていないのでかなり塩分濃度が高く、腐敗はしません。醤油入れなどに入れておくと、いろいろな料理に手軽に使えるので、重宝します。
おすすめ料理
料理は専門外なのですが、魚醤を使った料理を一品だけご紹介させていただきます。
【魚醤カレー】
スリランカなどのカレーでは、かつお節などの魚介系の出汁を使いますが、魚醤を使ったカレーもいけます。日本のうどん・そば屋作るカレー南蛮と、同じ系統の魚介風味のカレーです。
焼いたサバの切り身、タケノコ、キャベツ、大蒜、生姜、タマネギ、ゆでたジャガイモをオリーブオイルで炒め、ナツメグ、シナモン、ガラムマサラ、クミン、タバスコ、白胡椒、カレー粉を加えます。
焦げ始めたら適量の魚醤と水を加え、煮込みます。ジャガイモの角が溶けてとろみがつき始めたら、完成です。
最後に
簡単に作れる魚醤は、発酵という反応を利用した人の知恵です。海洋資源の保護が叫ばれる中、「雑魚」「外道」として捨てられる未利用魚たちを、すばらしい調味料に変えるという不思議な発酵の1年間を、是非試してみて下さい。