日本鶏図鑑01 土佐のオナガドリ:解説 都築政起・広島大学名誉教授
高知県原産。通常はオナガドリあるいはオナガと呼ぶ。昭和27年、国の特別天然記念物に指定。これに先立ち、大正12年、国の天然記念物に指定。その際の名称は「土佐の長尾鶏」。
適正な管理を行えば、雄の尾羽と蓑羽の一部が終生伸長を続けることが最大の特徴。尾羽の最長記録には10 mを越えるものがある。1年間に伸びる尾羽の長さには個体差があるが、都築の経験では70~140cm程度。雌では尾羽や鞍羽が換羽を行わずに伸長を続けることはないが、通常の品種に比べれば、尾羽も鞍羽も長めであり、優美さを感じさせる。
羽装色(内種、ないしゅ)の主なものに白笹(しろざさ)、赤笹(あかざさ)、白色がある。尚、本品種や小国鶏の場合には白笹を白藤(しらふじ)と呼ぶことが多い。画面のオナガドリはこの白藤羽装をもつ雄個体であり、最長尾は約5 mの長さがある。また、過去には猩々(しょうじょう)羽装のオナガドリが存在したが、現在では絶滅しているかも知れない。他方、全身黒色のオナガドリを作出している愛好家も存在すると聞く。白藤および赤笹内種では、その脚色は柳色(柳脚、やなぎあし)である。現在の白色内種は黄脚(きあし)をもつが、都築は過去にゴミ脚(ごみあし、灰色)をもつ白色個体を見たことがある。全内種に共通して、鶏冠(トサカ)は単冠、耳朶(じだ、みみたぶ)は白色である。
日本鶏審査標準(全国日本鶏保存会, 1997年)によれば、雄および雌成鶏の標準体重は1.8および1.35 kgに設定されているが個体差があることは勿論である。
本品種の存在は、日本鶏品種としては珍しく、江戸時代(1859年)」に著された西村廣休の「小品考」の中に明確に認めることができる。