自然薯とはヤマノイモと呼ばれる蔓性の多年草植物の根の部分です。自然薯はすり下ろし、生で食べるという点では、畑で栽培されるナガイモや大和芋、つくね芋などと同じですが、他の芋とは比較にならないほど高い香りと強い粘りがあります。自然薯はほぼ日本全土に分布していて、現在では栽培ものもありますが、昔は稲刈りを終えた農家などが山で掘ってくる貴重なものでした。また日本では古来から、ウナギに並ぶ滋養強壮の食材として、重宝されてきました。
自然薯は高級品
秋の山の幸としては最高級といっても間違いないものでしょう。値段も「最高級」です。数千円は普通で、大きな天然物は1万円を超えるものもあります。長いまま折れずに掘り出された自然薯は杉の葉などを敷いた箱に丁寧に置かれ、贈答品として扱われます。 自然薯は折れやすいのですが、折れると価値が下がってしまいます。山で掘ったら持ち帰るときに折れないように、数本の竹をガードするように周囲に巻いたり、紙筒に入れたりして持ち帰ります。
かるかんも自然薯で
鹿児島などで作られるかるかんも、一部の製菓業者が自然薯を材料にして作っています。稲刈りを終えた農家の人たちが、「堀子」に変身。それぞれが持ち場の山に入って掘り出し、製菓業者が争うように買い上げていきます。 買い上げた自然薯は1年分、水に入れて保存します。かるかんを作るすり下ろし、米粉と砂糖を加えて蒸し上げます、すり下ろした自然薯はとても粘りが強く、水を入れて薄めなければ重い鍋をくっつけて持ち上げるほど強くなります。
自然薯の見つけ方
自然薯は蔓性の植物なので、木々に巻き付いた蔓をたどって探します。葛や蔦など、様々な蔓が巻き付いていますが、自然薯の葉は尖ったハート形のような、独特な形をしているので、結構簡単に見つけることができます。その葉の蔓をたどります。 葉には茶色っぽくて丸い、豆のような「むかご」がついていることがあります。むかごは炒ってもゆでても揚げてもおいしいものなので、しっかり確保して味わいましょう。
山芋掘りを使う
自然薯は1メートルほども地中深くまで、根を伸ばしています。そして折れやすい性質をしています。静かに、周囲を掘り崩すようにして慎重に掘っていきましょう。自然薯を掘るには、「山芋掘り」という道具を使うと便利です。丸鑿(のみ)のような先端がついた長い鉄の棒で、自然薯を傷つけずに掘り出すことができるようになっています。
すり鉢で擦って
自然薯はたわしなどで泥を落とし、すり鉢で擦って料理します。おろし金では目が粗くなってしまうので、時間がかかりますがすり鉢で擦りましょう。皮はとても風味があるので、真っ白いとろろにはなりませんが、ぜひ皮ごと食べてほしいものです。 出汁や味噌汁、酢などで好きなように味付けします。ご飯にかけて食べてもいいですし、あまりのばさず、やや固めのまま温かいそばにかけて食べても大変おいしく食べられます。
自然薯を掘る際には必ず山の持ち主に許可を取りましょう。自然薯を掘ったあとの穴は誰かが落ちたりしないように埋め戻しましょう。