⑧ビオトープの濾過槽、濾過材を選ぶ

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⑦循環でビオトープの生態系を豊かに

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①ビオトープで自宅に小川を作る①

 

マツカサガイがヤマトシジミが生息する、ビオトープの濾過槽内。濾材として使っている珊瑚砂の間に身を埋めて、懸濁物を濾しとって食べるため、かなり水を浄化する(撮影:趣味千編集部)

濾過装置は「逆洗」できるものを

ビオトープは屋外なので、ポンプの吸水口に取り付けたストレーナーで大きなゴミを取り除いたとはいえ、土埃や粉状になった藻や落ち葉などは、ビオトープの濾過槽まで循環の過程で流れ込んできます。こうして濾過槽内に溜まった泥があまりにも多くなると、濾過槽内が詰まってしまい、循環が影響を受けてしまいます。濾材の間を十分に水が循環しない濾過槽内には、酸素が届きにくい場所ができて嫌気性のバクテリアが繁殖します。それはそれで脱窒というひとつの重要な濾過なのですが、ビオトープの場合は底が土の小川部分などで既にかなりの脱窒が行われているため、濾過槽は好気性に保ったほうが効率的です。
 
濾過槽内が詰まったら、水槽で楽しむアクアリウムの上部式濾過ならばここで内部のウールマットを取り出して洗ったりしますが、ビオトープのように濾過槽が大きい場合は濾材を取り出して掃除するとなると、大変な重労働になってしまいます。これを避けるために、ビオトープ用には「逆洗」ができる濾過槽を選びましょう。

逆洗できる濾過槽とは

逆洗できる濾過槽の構造。濾材をパンチングボードの上に載せている。「ポン抜き」はぴったり口径が合う穴に塩ビパイプを差し込んだもの。濾過槽の栓となる(作画:趣味千編集部)
 
逆洗とは濾過槽の水の循環の入り口と出口を逆にすることで、詰まった泥やゴミを押し流す仕組みです。ちょうど目詰まりしたザルの裏から水を当てるようなイメージです。ニシキゴイの飼育用の濾過槽には、こうした逆洗装置がついたものも販売されています。しかし濾過槽内の仕切りを工夫すれば、ほとんどの濾過槽は逆洗ができる構造に改造でいます。
濾材に対して下から水が吹き上がるような仕組みの濾過槽なら、ポンプを止めて濾過槽の底の栓を抜くだけで、濾材に目詰まりした汚れは上の水が下方に流れるのと同時に一気に押し流されてしまいます。これが逆洗の仕組みなのですが、濾過槽が大型になればなるほど、非常にありがたい構造となります。もしビオトープに濾過槽を設置するなら、こうした逆洗ができる、「下から上」に水が通過して濾過する構造の濾過槽を選ぶことをお勧めします。

全ての泥を洗わない

通常の濾過の状態は、吸水口から入った水がパンチング穴から入って吹き上がり、濾材の隙間を通って排水へ向かう。軽い汚泥は最上部に降り積もり、活性汚泥層を作る。ビオトープの濾過にとって、活性汚泥は大変重要(作画:趣味千編集部)
 
逆洗はごくたまに、ビオトープの水の循環が悪くなったなと感じたときに行えば良いものです。泥は全て流さず、むしろ一部を残すように心がけましょう。というのも、洗い流す泥は活性汚泥といい、水を浄化する様々なバクテリアが含まれているものです。活性汚泥はどんな濾材よりも水を浄化する能力に優れている、「宝の泥」なのです。ウールマットや活性炭よりずっと水を浄化する能力を持っているので、せっかくの泥を全部洗い流してしまって、いつも濾材がキラキラしているような状態にならないよう、注意しましょう。
泥は濁りを作るので美しい水の敵のようなイメージですが、「風の谷のナウシカ」の「腐海」のように、実は泥はビオトープの水をきれいにしているのです。泥にイトミミズやマツカサガイ、ヤマトシジミなどの二枚貝などを棲まわせて循環させれば、素晴らしい浄化能力を発揮します。

濾材のあれこれ

吸水を止めポン抜きを抜くと、濾過槽内の水が一気に底から排水される。濾材を目詰まりさせていた汚泥やゴミは、水の重さで一気に押し流される。活性汚泥をある程度残すように注意する(作画:趣味千編集部)
 
今回のビオトープに使った濾過槽は、閉店した活魚店が使っていた、いけす用の塩ビ製のものを格安でゆずってもらったものです。海水魚を扱っていたため、珊瑚砂などの濾材も付いていました。このままビオトープに使用します。
しかし濾材の珊瑚砂は、非常に重い物です。多孔質で優れた濾過材ではありますが、大変重く、取り扱いに非常に苦労します。
濾材には様々な種類が発売されていますが、基本的には生物濾過では濾材自体が水を浄化するのではなく、濾材に住むバクテリアが水を浄化するので、バクテリアがたくさん住むことができるものを選びましょう。多孔質であればかまいません。
松ぼっくりをミカンのネットに入れて濾過槽に並べたようないい加減な濾材でも、かなり濾過能力はあります。ビオトープの濾過には、軽く、そしてマイクロプラスチックを発生させない素材の濾材を選ぶようにしましょう。
プラ舟を使ってお米作り中。その様子はYouTubeでご覧ください。

二枚貝で濾過

濾過槽にはアオミドロやサヤミドロ、藍藻類の繁殖を防ぐため、ヨシズなどで日陰を作り日光を遮る(撮影:趣味千編集部)
 
ビオトープの濾過槽は何かを飼育できるくらい広いので、ナマズなどの他魚と混泳させられない肉食魚を飼育したり、繁殖を目指す魚のペアを飼育したりすることもできます。水も循環し、酸素も十分あります。
もし濾過能力をパワーアップさせたいなら、二枚貝を入れることもできます。珊瑚砂の濾過槽なので、泥質を好むタガイやドブガイよりも、砂礫や石底を好む、マツカサガイやニセマツカサガイ、小型のヤマトシジミなどが生息しやすいようです。活性汚泥がたっぷりたまったら、ドブガイやタガイなども飼うことができるようになります。
貝類はアサリやカキが海水を浄化する実験からもわかるように、大量の懸濁物を吸い込んで濾過することで養分を体内に取り込んでいます。その濾過能力は大変強力なものです。もし地元で二枚貝が採取できるなら、濾過槽に二枚貝を入れ、ビオトープの濾過槽のパワーアップに挑戦してみましょう。
 
シジミの採取方法

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