魚の皮を鞣す①
「羽子板」の異名を持つウスバハギ。大きい物は70センチを超える(撮影:趣味千編集部)

魚の皮はうまい

魚の皮は味が良い部分なので、よほど硬い魚の皮は別ですが、たとえば湯引きなどの料理で食べられています。酢味噌でいただくホシザメの湯引きや、トラフグの皮の湯引きなどの料理は、身に負けず劣らずうまいものです。
刺し身にする場合でも、わざわざ皮を残す「松皮造り」という調理方法があります。マダイやイサキなどの魚の皮に熱湯をかけて、すぐに氷締めするものです。皮と身の間の脂なども無駄にしないところが、味の良い理由です。

食えない皮の魚

ペロリと皮が剥げた。皮はビニールっぽい感触で、表面は紙やすりっぽい感触(撮影:趣味千編集部)

しかし皮が食える魚ばかりではありません。どうにもこうにも硬く、どんな調理法をしても食べられない魚もいます。それはカワハギの仲間と、一部のサメ、エイです。
これらの皮は紙やすりのようにざらざらとしていたり、おろし金のように突起だらけだったりします。こうした皮は食用以外の利用をされ、例えばカワハギの皮はサビキ釣りの針の材料に使われ、サメやエイの皮は刀の柄巻きやわさびおろしなどに加工され、使われてきました。

魚皮文化は古くから世界中にある

ミョウガ、ネギと和えたウスバハギの刺身。上質な白身だ(撮影:趣味千編集部)

食べられる魚の皮も、丈夫な物は衣類や帽子、靴に加工されてきました。アイヌなどの北方民族は、サケの皮の利用に長けていて、衣類にも使いました。大阪の国立民族学博物館には、サハリン(樺太)のアイヌが使った、見事なサケの皮の服が保存されています。説明によると40~50匹分のサケの皮が使われているそうです。
サケの皮は衣類の他にも靴などの履物にも加工されていました。チョウザメ、ヌタウナギ、アムールイトウ(タイメン)の皮なども、様々に利用されています。

ウスバハギ

ポン酢に肝を溶かしたものを刺身にまぶしていただく。カワハギの醍醐味だ(撮影:趣味千編集部)

刺身、煮付けと魚の味を堪能しつつ、皮も加工して利用してみたいなら、ウスバハギがおすすめです。50センチほどのウスバハギが980円で売っていたので買ってきました。
ウスバハギはカワハギ科の海水魚で、日本全国に分布する以外、亜熱帯や熱帯の海に広く分布する魚です。カワハギやウマヅラカワハギに比べるとずいぶん大きく、70センチを超える大物もいます。
しかし遊泳力が強くなく、冬に寒波が流れ込み、海が大荒れしたときなどは砂浜に打ち上げられ、拾って食べられることもあります。ハゴイタという地方名がありますが、まさに名前の通り、薄い板のような形をしています。

ウスバハギを料理

ウスバハギの煮付け。身の量が多く食べ応えがある(撮影:趣味千編集部)

ウスバハギの料理は簡単です。皮はザラザラとしたサンドペーパーのようですが、このざらざらはカワハギの小さな棘状の鱗です。調理の際には皮をはぐので、わざわざ鱗をはぐ必要はありません。
皮は簡単にペロリとはげます。包丁で魚体の縁に切れ目を入れておけば、きれいにつるりとむけてしまいます。
今回は皮を利用するのでなるべく傷つけないように、尾の近くから腹にかけて包丁を入れ、むきました。

ウスバハギの刺身

柿渋に浸したウスバハギの皮。一週間ほど漬け込む(撮影:趣味千編集部)

カワハギの刺身はフグに負けず劣らずの良い味ですが、フグにはないお楽しみがあります。肝です。晩秋から冬にかけて肥大したカワハギの肝は、新鮮な物は臭みも無く、しつこくないもののコクがあり、とろけるうまさが格別です。
刺身はフグに似せて薄く作る場合が多いですが、細切りが歯ごたえが楽しめ、おいしいものです。ミョウガやネギと和え、橙ポン酢に肝を溶かしたものに刺身を付けて食べる食べ方が至極でしょう。

ウスバハギの煮付け

頭や余った身は、骨ごとぶつ切りにして煮付けましょう。酒、みりん、しょうゆ、ショウガで煮汁を作り、さっと煮付けます。
タマネギや豆腐、ゴボウなどを一緒に煮ても魚の煮汁が染みこんでおいしくなります。ウスバハギは大型だけあって身が多く、食べ応えがあります。上質な白身なので、ちり鍋などにもよく合い、から揚げなどもいけます。
次回は残ったウスバハギの皮を加工してみます。

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