堅牢!実用車・運搬車を楽しむ
ウェルビー自転車工業の運搬車(手前)とブリヂストンサイクルのジュピター(奥)(撮影:趣味千編集部)

力強い自転車

頑丈一点張りの堅牢な運搬車。重い米袋でも薪でも酒でも、狭い路地裏まで確実に運ぶ高い機動性を持っている(撮影:趣味千編集部)

 

ロードタイプやマウンテンバイクなど、自転車には様々なタイプがありますが、昭和30年代ごろまではほとんどの自転車が「実用車」や「運搬車」と呼ばれる大型の武骨な頑丈一点張りの自転車で、近距離運送の主力として戦後の経済成長を支え、活躍してきました。オート三輪やHONDAのカブなどが登場する遥か前から、自転車は流通の要を担ってきていました。
戦時中は軍用自転車としても使われました。
故障が少なく、燃料も必要ない実用車は小回りもきくので災害にも強く、現代でも新聞配達や郵便配達、出前、警察などで活躍しています。移転前の築地市場などでは、年季の入った味のある実用車・運搬車が、現役として大活躍していました。
今回はそんなたくましく力強い実用車・運搬車の魅力についてご紹介します。
がっしりとした広い荷台。100キロ近い荷物を積んでも平気だ。(撮影:趣味千編集部)

実用車・運搬車の特徴

自転車を停めたときもしっかり安定する幅の広いスタンド。車輪が付いているのが特徴(撮影:趣味千編集部)

 

実用車・運搬車は太いフレームと頑丈な荷台が特徴で、100キロ前後の荷物を積んで走ることが可能です。とても重く、子どもにとっては倒れると起こすのも一苦労するような車種もありました。
自転車に乗りたいが子ども用自転車など誰も作っていない時代、子どもたちはこうした実用車に「三角乗り」という乗り方を編み出して挑戦し、器用に操っていました。スタジオジブリの「となりのトトロ」の中に、サツキちゃんの同級生として登場する「カンタ」が三角乗りをするシーンが登場します。
重い荷物を載せても自転車が倒れないように、しっかりしたスタンドがついているのも実用車・運搬車の特徴です。
現代は実用車・運搬車を作っているメーカーも少なくなってしまいました。実用車と運搬車を一車種ずつご紹介します。
格調高い革製のサドル。乗り心地は抜群(撮影:趣味千編集部)

ウェルビーサイクル工業運搬車

ステンレスの棒ハンドルとベル。大きなカゴはウェルビーの運搬車の特徴(撮影:趣味千編集部)

 

ウェルビーサイクル工業は大阪市の自転車メーカーで、1923年(大正12年)創業。ここの運搬車は、受注生産で現在でも入手が可能です。
高級感のある濃緑のフレームは頑丈一点張りで、トップチューブは2本が交差した、独特の構造になっています。フレームサイズは465ミリ。しっかりとした広い荷台と、ちょっとやそっとでは倒れないスタンド、大きな前カゴが特徴的です。スタンドには立てやすいように車輪もついています。
格好いい革のサドルの乗り心地は大変良く、大きな車体ではありますがタイヤも太いため、乗り心地は抜群です。未舗装の道でも安定して走ります。
ロッドブレーキなのでブレーキのききはやや遅めです。ライトは付属していませんので、あとから自分で取り付ける必要があります。参考価格は112800円です。
ロッドブレーキ。なかなか見ることが少なくなった(撮影:趣味千編集部)

ブリヂストンサイクル ジュピター

生産中止が惜しまれる、ブリヂストンサイクルのジュピターS型。乗りやすく堅牢な名車だ(撮影:趣味千編集部)

 

ジュピターはブリジストンサイクルが長年作ってきた実用車・運搬車でしたが、残念ながら製造は現在は中止されています。ただし頑丈一点張りの実用車・運搬車だけに、まだまだ現役バリバリのジュピターが、大量に使用されているので、目にする機会は多いでしょう。
ジュピターのライバルとも言えるパナソニックの「レギュラー」はまだ生産されている実用車で、いずれも価格は5~6万円前後です。
ジュピターは美しい漆黒の塗装で、磨き上げると大変美しいものです。フレームの形によって「D型」と「S型」の二種類があります。乗りやすく、こぎやすく、大変使い勝手の良い自転車です。砲弾型のライトもついています。
砲弾型ライト。実用車・運搬車は無骨なイメージだが、現代の自転車に比べてかなり洒落ており、洗練されたデザインだ(撮影:趣味千編集部)

実用車で実用的なサイクリング

ジュピターの荷台は、横板状になっているのが特徴。段ボール箱などを載せるときに、型崩れしないので便利(撮影:趣味千編集部)

 

実用車の運搬力を生かしたサイクリングは楽しいものです。弁当やお茶くらい満載しても余裕たっぷりなので、テントやキャンプ用品を積んで出かけても良いし、釣竿やクーラーを載せて釣りに出かけても良いし、いくらでも楽しむことができます。
七輪と炭、食材を積んでバーベキューに出かけたり、山で拾った薪を積んで持って帰ったりすることもできます。スピードは出ませんが、のんびりと安全に自転車をこいでいくのも、乙なものです。荷台に自作の箱を載せたり、塩ビ管を切って作ったロッドケースを付けたり、改良をすればもっと使い勝手が良くなり、いくらでも活躍の場が広がります。

盗難に注意

砂利道、未舗装の走行は前提の設計なので、抜群の安定。実直なSLのように、頼もしい働き者の自転車だ(撮影:趣味千編集部)
初夏の農道。もうすぐ麦秋。どこまでもずっと漕ぎ続けていきたくなる(撮影:趣味千編集部)

 

警察白書によると2014年の自転車の盗難件数は約56000件。2018年は35000件です。「日本は治安が比較的良い」とか言われていますが、これほどの件数、自転車が盗まれているのが現実です。盗まれても被害を届け出てないものもあるでしょうから、実際にはもっと多くの自転車が盗まれているかもしれません。
大事な自転車が盗まれると、本当に気落ちします。これだけの窃盗事件が起きている国なのだという現実をしっかり認識し、丈夫なカギをかけて愛車を守りましょう。盗られた自転車が帰ってくる確率は、高くはありません。
 
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