草泊りを作ろう
広大な牧野。牛の餌となる牧草を刈り取る作業は大変だ(撮影:趣味千編集部)

野に泊まる

「草泊まり」は、畜産家の簡易テント。子供たちの格好のおもちゃにもなる。気に入ったようで、風船を飾り付けた。(撮影:趣味千編集部)

 

「秋の田の仮庵の庵の苫をあらみわが衣手は露にぬれつつ」
 
百人一首に収められている天智天皇のこの和歌に登場する「仮庵」とはどんなものなのでしょうか。何年にもわたって使える農作業小屋のようなものかもしれませんし、もしかしたらもっと簡易な「草泊まり」のようなものだったのかもしれません。
 
「草泊まり」とは阿蘇地方の農家が草刈りをした際に植物で作っていた簡易テント。ごく簡単な「巣」のようなものです。今は作れる人も少なくなってしまいましたが、簡単なのでチャレンジしてみても面白いと思います。
 

キャンプ=テント?

竹を三角錐状に組み、テントのポールとする(撮影:趣味千編集部)

 

「キャンプ」と言えば「テント」と連想できるほど、キャンプにはテントが欠かせない存在です。かつては重い木綿の三角テントが主流でしたが、現在は組み立ても簡単で、居住性も快適なテントが安価でたくさん販売されるようになり、テント同士を連結したり、テント内を仕切って個室を作ったりできるものもあり、実に快適に野外生活を送ることが簡単にできるようになりました。
 
テントにしろコンロにしろランタンにしろ、キャンプ用の便利な道具はいくらでもあります。道具の質も向上し、値段も安くなりました。しかし快適さを追及するのではなく、とにかくアウトドア力を磨きたいのであれば、持ち物を最小限にするキャンプに挑戦してみるのも良いでしょう。
 

草泊まりの骨組み

 

竹がずれないよう、割り竹にしばりつけ固定する(撮影:趣味千編集部)

 

自宅から離れた農作業場で作業が数日間続く場合に草泊まりが作られました。農家の人はそこで煮炊きをし、眠りました。
草泊まりに必要な材料は、竹と、カヤやススキのような草です。道具は鎌のみ。まず7~8本の竹を、円錐状に組みます。これが草泊まりの骨組み、テントのポールになります。草泊まりはとんがり屋根をしていて、ネイティブアメリカン(インディアン)が使う「ティピー」に形状が似ています。高さは2メートルほどとなります。竹を束ねるのには、植物のつるや、植物を綯って作った縄を使います。縄を綯う技術が無い場合は、ロープを使いましょう。
三角錐に組み上がったら竹がずれないように、3~4カ所に輪をはめるようにして竹を巻き、縛り付けます。

草泊まりの壁と屋根

わら縄などで縫うようにしてススキの束を固定していく(撮影:趣味千編集部)

 

骨組みの竹が組み上がったら、カヤやススキを束ねたものを立てかけていきます。立てかけたら、束を内側から骨組みや輪に結びつけ、固定していきます。ぐるりと一周させるように立てかけたら、風で吹き飛ばされないように、その上から竹で作った輪をはめたり、縄で縛ったりしていきます。入り口の部分は塞がずに空けておきます。
屋根の部分は、ススキを束ねて作ります。ススキの根の部分をきつく縛り、穂の部分を広げたほうきのようなものを作り、てっぺんに被せます。

草泊まりの居住性

大型の草泊まりを作ることも可能ですが、小さな草泊まりの場合は、1~2人がやっと眠れる広さです。もちろんテントのように大の字になって眠ることはできませんし、中で立ってうろうろ歩き回ることもできません。しかしある程度の雨なら十分にしのげますし、入り口にススキを束ねた蓋をすれば、冷たい風もかなり防いでくれます。そして草の香りがとても良く、なんとなく気持ちが落ち着き、安心します。
テントは風が吹けば「バサバサ」、雨が降れば「ボタボタ」と、意外とやかましいものですが、草泊まりは静かなのです。風も雨も草が吸収してくれます。なんとも優しいテントです。

草泊まりの注意

外側からも割り竹やわら縄でしっかり縛り、完成(撮影:趣味千編集部)

 

草泊まりはかなりのカヤやススキが必要で、小さなものでも軽トラック一杯分は使います。自由に草を刈って良い広い野原というのはなかなかありませんが、もしそういう幸運に恵まれるのであれば、ぜひ草泊まりを作ってみてください。鎌一本で「テント」から作るキャンプができるようになれば、アウトドア力は相当なものだと言えるでしょう。
 
 
 
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