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激減してきた自然界のメダカ
ベランダに設置した雨どい小川。水生植物も植えて、小さな生態系ができあがりました。水が安定してきたら、メダカを放してみましょう。その前に現在のメダカの置かれた環境について、少し考えてみましょう。
メダカは絶滅の恐れがある
もし近くに、たくさんメダカがいる小川などがあれば、そこで採取してもよいでしょう。ただ、メダカは絶滅が心配されている淡水魚です。細々とやっと小さな集団が生きているような水域からは、採取しないようにしましょう。
メダカは1999年、環境省が絶滅危惧Ⅱ類に指定しました。最も身近な淡水魚のひとつだったメダカが絶滅するかもしれないというニュースの衝撃は、相当大きいものでした。
なぜメダカが減ったか
日本の水田はかつて「湿田」が多くありました。農業用水路と圃場の高低差があまりなく、雨が降るとびしゃびしゃになってしまうような田んぼです。こうしたところは田植えの時期、多くのミジンコが発生し、メダカやドジョウやギンブナなどが卵を産み、稚魚が成育する重要な場所でした。
しかし乾田化が進みます。「カットドレーン」などの技術が発達して、圃場はすっかり乾燥してしまいました。農業用水路はU字溝が埋められるなどしてコンクリート化され、水が必要でない時期はカラカラに乾くようになってしまいました。
外来種の追い打ち
こうした水田環境の変化に加え、そもそも水田そのものが宅地化されるなどして減り、メダカが生息できる場所が激減したのが、メダカが絶滅する恐れが出てきた理由のひとつです。
もう一つの理由は、外来種です。「カダヤシ」の名で知られる北米産のタップミノーが1900年代初めごろに蚊の駆除の目的で国内に導入されましたが、結果的にメダカを駆逐し、「メダカダヤシ」と揶揄される存在となりました。
ここに同じく北米原産の「ブルーギル」が加わります。ブラックバスのゲリラ放流とともに全国に広がり、メダカは格好の餌食となりました。
農薬で減ったメダカ
石積みで作られた用水路は、次々とコンクリート製になっていった。生き物の姿もぐっと減った(撮影:趣味千編集部)
メダカは実は海水でも生息できる魚です。干拓地の用水路などに生息する個体は、完全な海水の中をボラの稚魚などと一緒に泳いでいます。そのように水質の変化には強い性質を持っていますが、農薬の影響はもろに受けます。
農薬にも魚類に対する毒性が、いろいろあります。「A類」はほとんど影響ありませんが、「B類」と「C類」は死に至る影響があります。かつては非常に強い農薬が散布され、用水路にたくさんの魚が真っ白な腹を浮かせて死んでいるような光景も見られました。
いま絶滅の恐れが出ているメダカはこのように、多くの苦難を乗り越えて生き残った子孫です。なので採取に際しては、その環境が十分に採取に耐えられるものかよく観察する必要があります。もちろん採取するなら最小限にしましょう。
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