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いつからあるか分からない長火鉢。江戸か明治か大正か昭和かも分からないが、とにかく古いものだ(撮影:趣味千編集部)

暖房器具としての火鉢

平成に買った土瓶。南部鉄瓶や土瓶は長火鉢によく似合う。お湯は結構早く沸く(撮影:趣味千編集部)

現代では冬の暖房といえばエアコンやファンヒーター、灯油ストーブが主流です。電気や灯油、ガスが燃料です。しかしかつては囲炉裏や火鉢が冬の暖房の主力でした。木が燃料で、囲炉裏では薪や小枝、火鉢では炭を使いました。
囲炉裏は相当の火力を発しますが、火鉢はささやかな火力でした。アルミサッシなどがない昔の家屋では北風のすきま風も吹き込みますので、部屋全体を温めるのはかなり困難な事でした。
火鉢はどちらかというと、手のひらや顔など、体の前側を温めるもので、背中は綿入れなどを着込むものだったようです。

火鉢の種類

左から備長炭、菊炭、竹炭。菊炭が最も火鉢に適しているが、高い(撮影:趣味千編集部)

火鉢には陶器製の丸いものや、箱形のものなどがあります。陶器製がよく骨董屋の店先などで見られますが、材質は様々。陶器以外にも、軽石、凝結溶灰岩などの柔らかい石を彫った物や、太い木の幹や切り株をくりぬいたものなどがあります。
大小様々なサイズがあり、大部屋を暖めるためのものなどは、大人数人でないと抱えきれないようなものもありますし、手あぶり専用の物は丼鉢くらいしかありません。
自作することも出来ます。その場合は必ず、既に十分な使用実績がある火鉢と同じ材料、同じ寸法をコピーするようにしましょう。同じ材木でも、桑と杉では、燃えやすさに大きな差があります。

長火鉢の構造

手が届かず残った冬の柿。野鳥の餌となる。火鉢をはじめ、冬は冬で楽しみが多いものだ(撮影:趣味千編集部)

今回、納屋から引っ張り出してきたのは「箱火鉢」と呼ばれる物で、銅板を曲げて作った四角い箱の周囲を、欅(けやき)や桑などの板で囲い、柿などの燃えにくい木で枠をはめ込んであります。「家具調テレビ」というのがむかーし昔ありましたが、なんとなくそれを思い出させる「家具調」な火鉢です。座敷に良く似合います。
長火鉢には針箱のようにいくつかの小さな引き出しが付いており、炭を入れるスペースもあります。かつてこの引き出しは、火鉢が乾燥する性質を利用し、湿気ては困る海苔やお茶などの乾物を入れて保管する場所にしていました。

火鉢に入れる灰

火鉢の中で炭を燃やしても火事にならないのは、灰のお陰です。現在は鰹節をいぶす工場が使ったクヌギやブナの木灰などが火鉢用として販売もされていますが、かつては自分たちで灰を作っていました。藁灰も木灰と共によく用いられました。
灰には防火の役目もありますが、灰自体がかなりの熱を発するという役目もあります。火を消すときに炭を灰に埋めておくと、じわじわと炭は燃え続け、灰の中で灰になります。
灰が少ないと火事になる恐れがあります。少なくとも灰は厚み10センチ以上は入れるようにしましょう。

炭の種類

菊の花のように見えることから「菊炭」。ブナやナラの木で作ったもので、美しい断面をしたものは選りすぐられお茶用に使われる。燃えると部屋中に良い香りがたちこめる(撮影:趣味千編集部)

火鉢に入れる炭は、上質の物をお勧めします。バーベキューなどで使う、煙が出るような炭、タールの泡ががじゅくじゅく出るような炭は、部屋を一気に臭くし、頭が痛くなるほどです。本来、良い炭は燃えると、香のような非常に良いかおりを立てます。
お勧めなのはナラやクヌギの炭です。菊の花ような断面をしており、茶道でも使われる炭です。しかし値段は安くはありません。
カシなどの炭も、品質の良いものは悪臭や煙を発しませんので、いくつか炭を試してみて、火鉢に導入した方が良いでしょう。
高級炭としてよく知られる備長炭は、火鉢には適しません。備長炭は「爆跳」という現象を起こします。炭の中の水分が膨張することで起きる、爆発のような現象で、硬い備長炭では特に多くみられるものです。飛び散った炭の破片が畳を焦がしたり、火傷したりする危険があります。

練炭や豆炭

火箸は柄が壊れたので、小枝を削って柄を作った。火箸は銅製(撮影:趣味千編集部)

冬の市場など、屋外で火鉢を使う場合、火鉢に練炭や豆炭を入れているのを見かけることがあります。練炭や豆炭は石炭を原料としており、石炭には産地により、微量ながら水銀が含まれるものがあります。屋内で火鉢を使う場合は、練炭や豆炭など、石炭由来の燃料を使わないことをお勧めします。
石窯や七輪など、直接食材を入れて料理をする炉にも、石炭系の燃料の使用はしないほうが無難でしょう。

 

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