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大きな火を扱う技術を持つ人は少ない
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12万5千年前に人類の祖先が火を手に入れたと言われています。 それ以来、人類は火のコントロールを研究し、 制御する技を習得し、農業や工業など、様々に利用してきました。
しかし現代、大きな火を計画的に放ち、 コントロールする技を持つ人は、 国内ではかなり限られてきました。 大きな火をコントロールする技術を、 阿蘇山周辺の野焼きに学んでみました。
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カヤやススキが利用されなくなった
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大分や熊本県で行われる野焼きは、 牛を放牧する牧野で行われます。牧野にはカヤやススキがあり、 牛の餌や緑肥として使われています。 そしてかつては屋根材として重宝されていました。
しかし近代になって瓦やスレート葺きの家屋が普及しはじめると、 カヤの需要が激減。 秋になり枯れたまま刈り取られず残るカヤやススキが、 牧野に大量に残るようになってしまいました。
日光を確保し施肥も
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こうした枯れススキは日光を遮り、 早春に新芽を吹いた新しい草の成長を阻害します。 新しい柔らかい草は牛の好物なので、 草により勢いよく成長してほしいと願う畜産家が新芽の出始める直 前を狙って牧野に火を放ち、枯れススキを一掃するのです。
焼けたカヤやススキはいわゆる草木灰として牧野にとって重要な肥 料となります。他に野焼きには、 畜産の天敵であるアブやダニなどを駆除するという人もいます。
野焼きは綿密な計画
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野焼きは牧野を燃え広がる炎がとても大胆で印象的ですが、 実は綿密な計画と連携に基づいて行われています。 野焼きは地形や風向きなどを考慮し、 打ち合わせで役目を熟知した人を十分に配置した上で、 経験者が指揮を執って行われるものです。
これほど綿密に計画をして実施せねばならないのは、 野焼きで死者が出る事故が、しばしば起きてきたからです。 2000年代に入ってからも野焼きでの死者は絶えず、 数年に1度、 何人もの人が野焼きで亡くなる事故が発生しています。
実際の野焼きの例
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実際に九州中部の山地で行われた野焼きの例は次の通りです。
【面積】約100ヘクタール
【参加人員】
①火引き(点火の係) 3人
②火の延焼を防ぐ消火係 約30人
③大型動力噴霧器などで火勢を弱める係 3人
④消火を確認する係 3人
【装備】
背負い式消火水嚢(火の延焼を防ぐ係)、 大型動力噴霧器と軽トラック、火消し棒(杉の枝など)、 木綿などの燃えにくい服装
【防火帯作り】
野に火を放つ前に、あらかじめ野焼き現場の周囲の草を刈り、 十分な防火帯を構築しておく必要があります。 この作業は野焼きの数カ月前に行っておく必要があります。
防火帯は草はまだ草が青い時期に作ります。 草が青い時期でなければ、 防火帯を作る際の火が草原の枯れ草に燃え広がってしまう恐れがあ るからです。
防火帯は、幅7~8メートルに渡って草を刈り、 十分に乾燥させてから作ります。火を放ち、 燃えやすいものをあらかじめ燃やし終えておきます。
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【野焼きのおおまかな手順】
点火責任者の指示で点火。火引きは風向きを見て順に火を広げ、 すぐに防火帯か既に燃えた焼き跡へ待避。火引きの速度は、 消火が可能な規模かどうか確認しつつ行います。
本来の風向きとは別に、 火で上昇気流が起きて風向きが変わることがあります。背負い式消火水嚢や杉の枝を装備した消火係と意思疎通をしなが ら、作業を進めていきます。
残り火に注意。 乾燥した牛糞は炭のように燃え続けるので特に注意します。
緊急時について
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十分に計画をしても、炎に巻かれる危険がいつもあります。 危険な状態になったら、とにかく防火帯の外側に逃げますが、 火は上部に向かって燃え広がりますので、斜面では上ではなく、 横に逃げます。
逃げ損ねた場合、 水や背負い式消火水嚢があれば炎にかけて火勢を弱め、 炎を飛び越えて既に燃え終わった地点に突破する方法があります。 濡れタオルで顔を覆い、炎の小さな所を突破する方法もあります。 風下に火を放って枯れ草を焼き、そこに逃げ込む方法もあります。
ただしこれらは訓練を受けた人を対象とした最終手段です。 こうしたテクニックや、 野焼きの手順を知識として知っているからといって、 未経験者ができるものではありません。 もしキャンプやハイキング中に山火事などに遭遇してしまった場合 の避難のご参考としてお読みいただければ幸いです。
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