バルキーノで遊ぼう♪
波を蹴立てて進むバルキーノ。日本国内ではほとんど知られていないツールだが、実は世界中で釣師が愛用している(撮影:趣味千編集部)

バルキーノという漁具

長短2枚の板を繋げた単純な構造ながら、遊び方、釣りの実力は無限大(撮影:趣味千編集部)
 
魚釣りといえば、竿やリールが必要なものというイメージですが、竿もリールも使わず、かなり沖合の広い範囲を探ることができるツールもあります。その一つがバルキーノ。小さな筏のような船を沖合に走らせ、ルアーを引っ張らせたり、仕掛けを投入したりするという、独特の釣法です。イタリアなどヨーロッパ各地で楽しんでいる人が多く、それなりに釣果も上げています。バルキーノは、初心者でも、釣り未経験者でも簡単に遊べる、面白いツールです。

バルキーノの原理

遠投が難しい軽いルアーやフライでも、沖合いを広範囲に探れるのがバルキーノの利点(作画:趣味千編集部)
 
バルキーノは二枚の面積が異なる相似の板を平行に並べたものを海岸に置き、ラインで引っ張ることにより、沖合まで自動的に進んでいくというツールです。水の抵抗を受けると、バルキーノは海岸線に対して斜めに進み、沖合へどんどん出て行きます。
感覚的には凧が空に揚がっていくのによく似ています。バルキーノが凧、海水が風と考えて想像してもらうと、わかりやすいと思います。動力はなく、人力で引っ張るのですが、風と同様、潮に流れがあれば自然と潮流を受け、バルキーノはどんどん沖合に進んでくれます。

バルキーノってどういう意味?

バルキーノは「barchino」というイタリア語で、「小さな船」を表します。運河の水上移動手段に使われる小舟などもバルキーノと呼ばれます。イタリア海軍が使用した「突撃ボート」という爆薬を積んだ一種の特別攻撃兵器も、バルキーノと呼ばれていました。日本軍にもよく似た「震洋」というベニヤ板で作った悲劇的な特攻兵器がありましたが、いずれにせよバルキーノは「小さな船」を一般的に表すだけで、軍船や兵器の名ではありません。ご紹介するバルキーノはもっと素朴で実に牧歌的なものです。

バルキーノは仕掛けが大規模

トップからボトムまで、仕掛けは自在。餌釣り用の長大な仕掛けの敷設もお家芸だ(作画:趣味千編集部)
 
バルキーノの利点はいくつもありますが、最大の利点は、「多くの仕掛けが付けられる」ということです。投げ釣りやルアー釣りの場合、道糸のラインは100メートルも200メートルも海に出て行きますが、仕掛けは先端のせいぜい3メートル程度に過ぎません。ルアーも先端の一つだけとなります。
しかしバルキーノでは仕掛けはいくらでも長大にできます。バルキーノに引っ張っていってもらうラインに、どんどん枝針をつけていけば、延縄のように、何十メートルにも渡って仕掛けを増やしていくことが可能です。

バルキーノは広範囲を探る

バルキーノのもう一つの利点は、遠投をしなくていいことです。PEラインの登場で遠投が変わり、200メートル以上の遠投をする釣り人もいますが、初心者にはなかなか難しいものです。バルキーノならただ引っ張るだけで沖合に勝手に出て行ってくれ、その後、潮に乗せればいくらでも沖合に流れて行ってくれます。遠投が苦手な人でも、かなり遠くまで長大な仕掛けを送り込むことができます。

単に楽しい

バルキーノ職人が作ったUボート。単純化しているが、海に出すとかなりリアルで面白い。モデラーも楽しめる(撮影:趣味千編集部)
 
バルキーノは文句なしに単に楽しく遊べます。釣りをしなくても、自分が作ったバルキーノが、遥か沖合で白波を立てて走っている姿は、かなり爽快。サーファーや漁船の漁師さんが「何じゃこりゃ!」と、驚いて見ていくこともありますし、イルカやスナメリなどが面白がって近づいてくることもあります。

バルキーノに免許は不要

バルキーノは船舶ではありませんので免許はいりません。延縄のように長大な仕掛けが付けられますが、釣りの仕掛けの枝針の本数に関する法律の制限はありませんし、仕掛けを設置して放置する訳ではないので、延縄には当たりません。
ではバルキーノは何かというと、あえて言うならば「浮き」でしょう。普通の「浮きの流し釣り」は完全に潮流任せとなりますが、バルキーノは引っ張れば沖合に勝手に出て行ってくれる「浮き」と言えます。

バルキーノで釣れる魚は?

バルキーノで釣れたセイゴ。サビキのような軽いものでも、重りもつけず広範囲が探れるため、ショアジギングより有利(撮影:趣味千編集部)
 
投げ釣り、浮き釣り、サビキ、ルアーなどで釣れる魚は全てバルキーノのターゲットとなります。釣り方と仕掛けを変えれば、表層から中層、海底まで、あらゆる水深に仕掛けを送り込むことができます。スズキもキスもカンパチもマダイもカレイもヒラメも、ほぼ全ての魚が狙えます。
ただし、磯や藻場や、バルキーノの操艇が難しい場所に居着く根魚は、かなりの操艇テクニックが必要となります。
 

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