ベテルギウスを見てみる
望遠レンズで強引に撮影したベテルギウス。実際にはガスを噴き出し、梅干しのように表面がボコボコらしい(撮影:趣味千編集部)

急激に暗くなるベテルギウス

 オリオン座の恒星ベテルギウス(900万~1000万歳)が2019年10月ごろから急激に暗くなって、通常時の2.5分の1の明るさにがなったという論文を米天文学者が発表し、CNNなどが伝えています。ベテルギウスは元々、明るくなったり暗くなったりする不安定な恒星で、明るさも0.4等から1.3等と変化するのは良くあることなのですが、ニュースは今回ほど急に暗くなるのは「尋常ではない」事情があるのではないかと伝えています。

ベテルギウスはオリオン座の肩

冬の夜空の主役のオリオン座。オリオンが棍棒を振り上げた肩にあたる赤い星がベテルギウスだ(撮影:趣味千編集部)

ベテルギウスは最もわかりやすい星座のひとつ「オリオン座」の最左上の赤い星です。ギリシャ神話に出てくるオリオンは狩人で、片腕に毛皮を垂らし、片手に棍棒を持っている姿で描かれることが多いようです。ベテルギウスはオリオンの肩に当たる部分の星です。
 棍棒で狩りをするというのがよくわかりませんが、ギリシャ神話では、娘との結婚を嫌がったキオス島の王が、オリオンをライオンに食わせようとして獅子退治を要請したのに対し、オリオンが棍棒でライオンを撲殺し、目論見が外れたとあるので、オリオンにとっては棍棒は狩りの道具だったのでしょう。乱暴な性格として描かれているあたり、日本神話の素盞嗚尊(すさのおのみこと)をなんとなく彷彿とさせます。

ベテルギウスは冬の大三角

カメラで撮影したベテルギウス。赤っぽい色をしている(撮影:趣味千編集部)

またベテルギウスは冬の大三角の一つでもあります。おおいぬ座のシリウスと、こいぬ座のプロキオンと共に、大きな三角形を形成しています。冬の大三角もオリオン座と同様に見つけやすい星座です。
こいぬ座、おおいぬ座ともに猟犬ですが、オリオンの猟犬ではありません。こいぬ座は別の狩人の犬でした。月と狩猟の神のアルテミスがたまたま狩人に水浴びを目撃されたことに激怒し、狩人を鹿に変えた上で、狩人の猟犬に襲わせ殺害。そうとは知らず亡き狩人を待つ、哀れな犬の姿とされています。何かにつけて月に親しんできた東洋から見ると、とても月の神の所業とは思えぬ神話です。

ベテルギウスの最期

ベテルギウスは「赤色超巨星」と呼ばれる星で、太陽の1000倍の直径がある大きな星です。質量は太陽の20倍。太陽が46億歳なのに対し、ベテルギウスはかなりの高齢なので、明日にでも数万年後にでも超新星爆発を起こし、中性子星やブラックホールになってもおかしくないと言われています。
ベテルギウスのような重い星は、「ガンマ線バースト」によって最期を迎えます。ガンマ線バーストはベテルギウスの「死」でありますが、新しい星が多く生まれる世代交代でもあります。

ガンマ線バーストの影響

拡大したベテルギウスの写真。何枚撮っても楕円形っぽく見えるのはレンズのせいか、大気のせいか(撮影:趣味千編集部)

ガンマ線バーストが起きると、大量の放射線が発生し、オゾン層を破壊するなどし、大量絶滅を引き起こす恐れがありますが、ベテルギウスではその心配はないと、いまのところ言われています。こうしたすさまじい大爆発で発生するガンマ線バーストですが、実は日に何度も宇宙のどこかで起きている現象で、世界各地で観測されています。
2019年に科学誌「ネイチャー」に発表された東大などの国際研究チームがとらえたガンマ線は、45億年前に太陽の数十倍の星が大爆発し、ブラックホールになった際に出したものでした。このときのエネルギーは太陽の一生分のエネルギーに匹敵するとみられています。それがわずか数十秒で放出されるわけですから、凄まじい破壊力なのは当然です。
ベテルギウスが爆発すると、地球からは満月ほどの明るさになり、昼でも見えると予測されています。

 

ベテルギウスを撮影してみる

ベテルギウスがどうなっているか心配しても仕方ないことではありますが、興味本位で望遠レンズで撮影してみました。南の空にオリオン座を探すと、左上に赤い星ベテルギウスがすぐに見つかります。三脚に据えたカメラで撮影します。
望遠レンズで照準が定まりにくいので、少しずつ絞り込むようにしますが、風が強いと鏡筒が揺れ、ファインダーの中は大地震のようになってしまいます。
撮影したベテルギウスはやはり赤っぽく、しかも楕円形に見えます。これがレンズのせいか大気のせいかわかりませんが、何十枚撮っても楕円形に写ります。
2013年の日本からの観測ではベテルギウスは「楕円にゆがんでいる」とありますので、もしかしたら本当に楕円形のベテルギウスが写っているのかもしれません。

ベテルギウスが爆発したらトンネルの中に逃げる?

明るく輝くシリウス。青白い。何枚撮ってもこれは円形に近く撮れる(撮影:趣味千編集部)

宇宙規模の災害であるガンマ線バーストがもし地球に直撃した場合、これを避けるには、放射線を遮蔽する非常に厚い鉛に囲まれた核シェルターのようなものに隠れるしかないようです。数十秒間から数日間は隠れおおせ、直撃を避けられたとしても、その後はオゾン層が破壊されることなどによる影響で、地球の環境は激変します。滅びる生物も多いかもしれません。
そもそも日本にはそうそう核シェルターなどないので、都市部の人は地下鉄などに逃げるのも手でしょうか。地方の人は山間部の林道のトンネルなどに逃げるしかないかもしれません。
宇宙規模の災害が地球を襲う日まで、せめて平和に過ごしたいものです。

 

HOMEへ

自然観察カテゴリの最新記事