火山を観察しよう③桜島

火山を観察しよう③桜島

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桜島の爆発的噴火。天を突き上げるように噴煙がもくもくと立ち上がる(撮影:趣味千編集部)

桜島の観察場所

風に流される桜島の噴煙。風下はひどい降灰となる。ニュースの降灰予報は必見だ(撮影:趣味千編集部)

鹿児島市の桜島も個性的な火山です。1914年の大正噴火で陸続きになるまでは、島でした。なので鹿児島湾(錦江湾)の沿岸の様々なところから見ることが出来ます。
おすすめは鹿児島市を流れる甲突川の河口付近にあたる鹿児島市与次郎の長水路です。ここは1600メートルの長さがある道路のような防波堤で、歩行者と自転車以外は入れないようになっています。ここからは桜島が丸見えなので、錦江湾を行き交う船を見ながら、のんびりと眺めることが出来ます。
桜島に渡ったら、より間近に見ることが出来ます。湯平展望台は火口に近く、迫力のある噴煙を見上げることができ、錦江湾と沿岸を一望できるスポットです。

桜島の噴火警戒レベル

壊れやすい火山灰と火山礫、軽石が積み重なった桜島の山体は、しょっちゅう土石流が発生する。砂防は大規模だ(撮影:趣味千編集部)

 

桜島の噴火警戒レベルは3で、登山や入山が禁止されています。火口からおおむね2キロ範囲は噴石の飛散や火砕流に注意が必要です。
しょっちゅう爆発的噴火をしている火山なので、登山しようと試みる人はまずいないでしょうが、立ち入り禁止の場所には立ち入らないようにしましょう。
桜島は地下のマグマが次第にたまり、大正噴火クラスの噴火が徐々に迫っています。このため島全体に避難港が設けられています。いざ大規模噴火となれば、24時間運航している桜島フェリーがそれぞれの避難港に向かい、島民を島外に運び出すことになっています。
2015年には噴火警戒レベルが4(避難準備)に引き上げられ、一部の地区の住民が島内の別の地区に避難しました。

桜島の噴火の特徴

火口のすぐ近くには、軽自動車ほどの巨大な火山岩が飛んでくることもある。もちろん立ち入りは禁止(撮影:趣味千編集部)

 

しょっちゅう爆発的噴火をする桜島ですが、昭和には全く噴火しない時期もあり、遠足で桜島に登るということもありました。年によっては1000回近く噴火することもある近年からは想像も付きません。「火口で野球をした」などと思い出を語る人もいます。
桜島の火口は昭和火口、南岳火口などがありますが、最近はもっぱら昭和火口からの噴火が多数を占めます。しかし2019年11月8日、19年ぶりに南岳火口から噴火。噴煙の高さは5500メートルに達しました。
桜島の噴火の特徴は、爆発的噴火です。「ズーン」や「ドーン」という「空振」や地響きを伴いながら噴石を噴き上げ、キノコ雲のような噴煙を上げます。桜島に住む住人の中には、夜中に独特の地響きを感じ、「もうすぐ噴火すると察知できる」という人もいます。

噴煙の高さは、風の有無で大きく違います。風のない日は噴煙が高く上がりますので、「噴煙が高い」=「大きな噴火」とは一概には言えません。

 

火山はわからない

金床状に広がる桜島の噴煙。阿蘇は灰を「よな」と呼ぶが、鹿児島は「へ」と呼ぶ(撮影:趣味千編集部)
水蒸気を含む火山ガスとともに噴き上がる噴煙。重い火山灰が雨のように降っているのが見える(撮影:趣味千編集部)

火山は地震と同様、いつ噴火するかということを予測するのが困難です。火山学者に尋ねても、いつ地震が起きるかと地震学者に尋ねた場合と同様に「いつ噴火してもおかしくないという心構えが大事」と答え、いつどんな噴火があったかという噴火史を語ることがほとんどです。何がどうなって噴火するか、要するにわかっていないことが多いのです。しかしわからないことをわからないというのはとても大事なことです。
桜島の大正噴火では、住人が様々な異変に気づき、通報したものの、測候所が「噴火なし」と回答したため、大きな犠牲が出ました。この反省を書き記した石碑が桜島の鹿児島市東桜町にあります。「再び噴火は起きるだろうが、理論を信用しないで、異変を認知したら未然に避難準備することが肝要だ」という内容の文章が彫られており、「科学不信の碑」として知られています。
火山を眺めていると、地球が生きていると感じられます。

 

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