夏の干潟を観察する―ムツゴロウとカニの天国①

夏の干潟を観察する―ムツゴロウとカニの天国①
背びれを広げたムツゴロウ。泥の中にいるものの、目が覚めるような鮮やかなブルーのスポットが入った、非常に美しい魚だ(撮影:趣味千編集部)

干潟は生き物の天国

干満差が大きい有明海。長潮で干満差が小さくても、地平線が見えるほど潮が引く(撮影:趣味千編集部)
 
干潟は多くの生物が生息する大変豊かな生態系を持っています。魚や貝、甲殻類やゴカイなどの環形動物だけでなく、鳥類にとっても大切な餌場です。
東京湾の三番瀬や有明海のような広大な干潟でなくても、港湾や河口など、潮の流れが緩く波が静かな場所には、小さな干潟があることが多く、都内でも運河の河口部などには干潮時、小さな干潟が現れます。
干潟の生き物は夏季、特に活発に活動します。望遠レンズや双眼鏡を持って観察すると、生き物たちのユニークな動きが楽しめます。

干潟のタイプと潮汐

沖合で漁獲したアサリを運ぶために海の道に待機する軽トラック群(撮影:趣味千編集部)
 
干潟の生き物を観察するなら、当然ながら干潮を狙いましょう。潮汐表で干潮時刻を調べていかないと、ただの濁った水を眺めるだけになってしまいますので、ご注意を。
干潟には色々な種類があります。砂が中心の、歩けるような干潟もありますし、とろとろの泥でできた干潟もあります。泥でできた干潟は歩くのは危険で、下手をすると一気に胸ぐらいまで埋まってしまいます。大事故になる可能性があるので、未経験者は立ち入らないようにしましょう。

カニだらけ

クロベンケイガニと思われるカニ。干潟はいろんな種類のカニがいる(撮影:趣味千編集部)
 
今回は有明海に面した干潟を訪ねました。有明海は干満の差が大きく、沖合まで潮が引きます。このため漁業用にコンクリートの道路が沖合まで作られているところがあります。この道路はとても干潟の観察に適していますが、沖合で獲ったアサリを運ぶ軽トラックが通る場所なので、立ち入らないようにしましょう。
潮が引くと干潟はカニの天国になります。数万、数十万匹のカニが現れ、しきりに泥をハサミで口に運ぶ姿が観察できます。
カニの種類は、ヤマトオサガニやシオマネキなど。いずれも遠くが見渡せるように、目が「♪」を逆さまにしたような独特の形をしています。縄張りを巡って威嚇し合う行為はダンスのようにユニークです。
大量に見られるヤマトオサガニ。マッチ棒のような目が宇宙人っぽい(撮影:趣味千編集部)

 

ムツゴロウ王国

ムツゴロウの巣穴。移動した痕跡が放射状に広がっている(撮影:趣味千編集部)
 
有明海の干潟の主役はムツゴロウです。奇妙な名前、マンガに出てくるカエルのような滑稽な顔、どれをとっても非常に個性的なハゼの仲間です。
ムツゴロウは巣穴を中心に50センチから1メートルの範囲を縄張りにしています。巣穴の深さは1メートルほどです。ムツゴロウがいる穴は放射状に、ムツゴロウの通った跡がついています。鳥などが襲ってきた場合、ムツゴロウは素早く巣穴に潜り、身を潜めます。

ムツゴロウの大きさと餌

リラックス中のムツゴロウ。同種にはかなり激しく縄張りを主張するが、カニには基本的に無頓着だ(撮影:趣味千編集部)
 
ムツゴロウはだいたい15センチほどの大きさで成魚です。しかし20センチを超えるようなデカいものもいます。
ムツゴロウは草食。干潟の表面に生えた珪藻を餌にしています。ムツゴロウの縄張りはムツゴロウの餌場の範囲でもあります。口を泥に付けてモグモグと動かすようなしぐさをしているのは、珪藻を食べているところです。ムツゴロウによく似たトビハゼはかわいらしいですが肉食で、小さなカニや稚魚などを餌にしています。

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